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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「さくら」(西加奈子)

 少し前に読んだ小説だけど、年度末のどさくさの時だったので、書評が書けなかった。今、思い出して書いている。
西加奈子さんの2005年の作品。
サクラ

とても印象に残る小説でした。スーパーヒーローのお兄ちゃんにあこがれる弟と妹。この話は主人公である弟の視点で書かれている。そして一番かたられているの相手は妹のこと。とても深い家族愛、その愛の深さゆえ異常な場面が結構ある。でもそれはこの小説の中では十分理解できる世界ではある。しかし、社会的には少々普通とは言えない世界かもしれない。
 ひたすら家族のために仕事をし、そのうちに潰れてゆく父親。淡々と家庭を守り采配を振るっていた母親も実は内面が壊れていく。最愛のお兄さんに先立たれ自分を見失う妹。そんな家族のありように距離ができてしまう主人公である弟。
 この小説を読んでいる間は常に緊張がつきまとう。家族の形は社会の変遷とともに変わっていく。急激な変遷は家族の在り方に大きな変化を与える。また、家族を構成するメンバー、例えばお父さん、お母さん、息子、娘、さらに息子、それぞれの生活と思いが家族のありように大きく影響する。そして更にその家族の構成員にふりかかる大きな出来事が家族に大きな影響を与える。
 長兄は大きな災難に見舞われる。お父さんはドロップアウトする、お母さんは形を保とうとする。人生に真摯に対応する妹は・・・。そんな家族を唯一普通の視線で見て、一番心悩ませているのが主人公の次男。
 すべての家族の唯一の心のよりどころは、サクラという老犬。やりきれない日々の出来事、頼るすべのない家族、唯一つなぎとめてくれるのが飼い犬のサクラであった。
いまどきの家庭の在り方を素晴らしく厳しく描写している小説だと思う。

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