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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「薬指の標本」(小川洋子)

幻想的な小説だ。そしてエロチックである。標本を作る弟子丸氏、自分自身の顕在化しない意識の中で標本師を求める主人公の女性。
薬指の標本

標本が持つイメージは本来は学術的役割である。しかしここでは“切り捨てるもの”“離れるもの”“葬り去るもの”なのである。
私自身が持っている“標本”のイメージは、小学校低学年の頃、怖いもの見たさに休み時間に理科室へ忍び込み見た猫やカエルが解剖されホルマリン浸けにされたものだった。へたれな私はチラリと見てからすぐに逃げ出していた。そこには残酷と禁断という言葉が浮かんでくる。そう、この小説の裏側にはそんな味付けがされているのだ。
もうひとつ、標本という言葉やそれを作るという行為が持つ”拘束”“束縛”もしくは”コレクション”というイメージもそこにただよう。
さらに、タイプライターの活字をばらまいてしまった主人公に対して、元通りにするよう指示し決して手伝うおうとしない、それどころか這いつくばって活字を探す主人公の姿を上から冷ややかに眺めている標本師の態度が表現するサディスティックな光景。
この小説はそんな理不尽な世界に翻弄されていく若い女の姿を表している。
しかし、ある意味耽美な世界でもあるのだ。

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