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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評もうひとつのシアター!(有川浩)

浩さんの才能爆発!脚本まで書けるなんて。かの零細劇団の苦悩?を書いた”シアター”の出張公演を描いた脚本である。これは実際に紀伊國屋劇場にて上演もされたものだとの事。2011年だから今から4年前。自分がまだ有川浩さんを知らない時だったかも知れない。
モウヒトツノシアター

 今、有川さんの小説に心酔しているなかで、実際に作者自らが書いた脚本で上演された演劇があったということだから、見られなかった事がとても残念に思える。映画ではないのだからこれだけは後でDVDで・・・というわけには行かないのがホントに残念。
ストーリーは、劇団シアターフラッグが初の地方公演、といっても高校の文化祭で、かの演目”はきだめストレンジャー”を演じるというものだが、色々な不都合が発生し、実はその裏で妨害しようとしている者がいることがわかってくる。脚本だから、読んでいるとそれがだれかはすぐわかってしまうのだが、その犯人の主人公の司(つかさ)や巧(たくみ)との関係や、終演後の印象深いあいさつなど、なかなか盛り上げ方が素晴らしい。
特に愁眉なのは、妨害によって必要な小道具が届かないなか、主宰者巧の新たな発案により素晴らしいリカバリーを果たす劇団員の活躍。出番の無いメンバーが小道具の替わりを演じるというもの。これぞ役者魂ってとこです。
わずか2時間ほどで読めてしまう脚本なのだがとてもテンポがよくて楽しめるのだ。
巻末に作者と実演時の出演者である、大和田伸也さんとまた、阿部丈二さんとの対談が収録されている。有川浩さんがそのなかで語っている言葉。“自分のためには頑張れなくても人のためになら頑張れる”という言葉はなかなかいい。
脚本の常態かも知れないが、演じているなかで、変化してゆく部分が当然ある。この本は実際のステージのなかでの変化も補填された最終形ということで完成度の高いものになっている。本文中に出てくる脚註は各幕の最後に収録されているがこれを読むと実際のステージの雰囲気がとてもリアルに伝わってきて面白い。
有川浩さんはとても多彩な小説家であることは今までリリースしてきた夥しい小説を見ればわかるが、脚本家としても十分にやっていける能力を持っていると思う。この分野においても今後の活躍が楽しみだ。
最後に、巻末の対談のなかに出てくるもうひとつの印象的な言葉。“自分の胸のなかに住んでいる読者”有川浩さんは書く側の人ではあるが、その心のなかにはかならず、読む側の人がいて、自分が書いたものを評価しているという。だから素晴らしい文章が書けるのかとこの言葉を聞いて思った次第である。ぜひご一読を。

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