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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「[雪と珊瑚と」(梨木香歩)

2年も前に出版されていた梨木さんの作品だ。知らなかった。友人のSさんから教えてもらって、図書館で単行本を借りてきた。まだ文庫にはなっていないのかな?
このお話は、ごく普通の人の人生の一部を書いているものだ。”からくりからくさ”や”りかさん”のように不思議物語ではない。”ごく普通”といっても見方によってはそれほど普通ではないかも知れないが、離婚した子持ちの若い女性が出会う人々とのふれあいの中で自分自身の“頑な”な性格がほぐれていき、やがて、疲れている人達を元気づけることが出来るようなカフェを作りたいと思うようになる。
雪と珊瑚と

主人公の女性“珊瑚”は生活のため働くことにして、まず、自分の子供である生後8ヶ月の娘”雪”を預かってくれるところを探していた。そこで出会ったのがくららだった。彼女は64歳、一人住まいでありキリスト教徒だった。若き日には各国へ災害支援や布教に赴き、多くの知識と経験を持っていた。特に彼女の素晴らしい才能は料理。雪を預かってもらい、時たまご馳走になるくららの料理に珊瑚は深い驚きと幸せを感じるのであった。そしてやがて、疲れた勤め人を癒す料理を作り、食べてもらうカフェを開こうと決意した。
彼女のこの計画に数少ないが彼女の周囲にいる友人達が協力をし、やがてカフェは開店する。都会の雑踏から少し離れた鎮守の森のような古い屋敷を借り、自然を残しながらすこし改装し開店したカフェ”雪と珊瑚”彼女がくららから教わり、農業をしているくららの甥やその友人が作った有機農法による野菜で作った料理、それは静かな人気を博していた。
あるとき、店の常連となった女性(この女性は実は作家であった、梨木さんの姿?)が雑誌にカフェ“雪と珊瑚”を紹介したことにより多くの客が来るようになった。珊瑚は野菜の仕入先を増やし、友人である由岐と二人で忙しい毎日を送る。また、駅前に出来たビルで、惣菜の販売をしないかという声もかかった。しかしその最中、珊瑚は過労で倒れてしまう。珊瑚にコーヒーの入れ方を教えてくれた喫茶店のマスターは、飲食業は売れ出して事業拡張すると料理の質が落ち、そのうち客が遠のいて、いつの間にか消えてしまうものだと示唆してくれる。珊瑚はリフレッシュを兼ねて数日の休みを取った。
ある意味ではこの物語はひとつのサクセスストーリーなのであるが、また別の一面も持ち合わせているのだ。珊瑚を取り巻く素晴らしい女性達との関わり、そしてその交流から珊瑚の頑なな生き方は、徐々に色々なことが許容出できる女性に変わっていくのである。
とても真面目でひたむきな登場人物達、那美、由岐、くらら、そして珊瑚がかつてアルバイトをしていたパン屋”たぬきばやし”の奥さん、別れた夫、泰司の母親などとても共感がもてる登場人物ばかりなのだ。しかし中には珊瑚に好意的でない者もいたのだが、珊瑚はその彼女の指摘も素直に受け入れて行く。珊瑚を一番支えたのは娘の雪であった。物語の中に散りばめられている、成長してゆく雪の姿はとてもかわいい。
ま、フィクションだからね。といってしまえばそれまでなのだが。このカフェ、とても描写が細かいので、どこかにきっとモデルがあるのではないかと思う。行ってみたいものだ。
このお話はまだまだ発展させて行ける素地がたくさんある。どうか梨木さんがこの続きを書いてくれることを期待したいものです。

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