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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「LAST」(石田衣良)

(ネタばれがありますのでご注意を)
短編7話、すべて暗く、厳しいお話だ。しかし、なぜか一番最後には、これでお仕舞いではなく、後に続く気配が残されている。作者があとがきで書いた、物語を読んだ後、その後に続くリアルな読者の世界を暗く沈んだ雰囲気を継続させるのではなく、こんな厳しい状況があってもまだ、これから頑張ればいいという、希望を持たせてくれているのだ。
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どんなに暗い夜であっても、明けない夜は無い。この言葉に作者の思いが集約されている。
ラストシリーズは、ライド、ジョブ、コール、ホーム、ドロー、シュート、バトルと続く。どの物語にも物語相互には関連は無い。しかし、どの物語も借金で身を持ち崩したものたちが死の瀬戸際から這い上がってくるシチュエイションなのである。(ラストシュートはちょっと違うが)
ライドの主人公は自殺に追い込まれる。ジョブは、セックスボランティアを依頼され、なんだかそれで、世の中の役に立ち、さらに借金も返済できるのではと割りきる女性が主人公だ。コール、これはちょっと怖い。テレフォンクラブではじめて会話した相手の女性は3人もの変態男を殺し、テレビ電話の向こうで首を切って自殺するという凄惨な物語。ホームはまさに、家を失い上野公園のブルーシートハウスに拾われる男とその後の生き方。ドローはオレオレ詐欺などの役回りのひとつ、”出し屋”を依頼された、主人公がヤバくなった最後の場面をどう切り抜けたか。シュートはちょっと毛色が異なる。ベトナムでの幼児買春の末の凄惨な世界。そしてバトルはロシアンルーレットで命を賭けさせられる男の起死回生の話し。
石田衣良はいったいどのようにしてこれら非日常なネタがあつめられたのだろう?作家になるにはよほど特異な体験を経なければならないのだろうか?もう、この短編すべてのネタを持っているというだけで脱帽である。自分は作家にはなれないな、と思わせられたのである。

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