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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「花石物語」(井上ひさし)

井上ひさしの小説を読むのは久しぶりだ。前は”父と暮らせば”だったか。これは戯曲ではあるが。
この小説は井上の若かりし頃の自伝と言われている。他にも自伝的なものはある。”モッキンポッド氏の後始末”もそうだ。どちらもユーモアとぺーソスがふんだんに散りばめられており、読んでいて面白いが結構悲しい部分も多い。
花石ものがたり

花石とは釜石のことだと思う。遠野から汽車で約半日、大きな製鉄所のある漁港といえば釜石なのだ。花石以外は実際にある地名を使っているようだ。
主人公の学生の母はここに住み、屋台を曳いて生計を立てている。主人公は夏休みを利用して長い時間汽車に乗り母親の部屋を訪れる。彼はある病気にかかっていた。自分は四谷の坂の上にある鷲のマークの大学に通っているのだが、東京大学の銀杏のマークや早稲田大学のペンのマークの記章を見ると劣等感を感じ、吃音になってしまったのである。それは自分に地震が無いということの現れであるのだが。
この物語は一夏に主人公が出会った人達のことや、色々な事件のことを書いている。また、船会社や行商など失敗ばかりしたアルバイトのことも。私たちの青春(1970年代後半)時代の雰囲気とは少々異なるが、主人公の真面目さ、また、情に流されやすさなどがよくわかり、愛しさが募ってくる。
とくに主人公に大きな印象を与え、また、アルバイトを紹介してくれた重要人物がいる。となりの家の二階、主人公と向かいの窓の住人カオルである。彼女はそこpで女郎をしているが、暗い雰囲気は全くなく、とても明るく振る舞える一人であった。物語の終わりには彼女のためにと主人公はある決意をするのだ。
物語の大部分は東北弁の会話形式で進んで行く。これがまたいい。記述は標準語だが、東北弁でルビが打ってあるのだ。最後まで読みとおすと大分東北弁が理解できたような気になる。東北弁は難解ではあるが、とても親しみやすい優しい言葉であることがわかる。

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