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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「波のうえの魔術師」(石田衣良)

 私が読んだ二つ目の石田衣良さんの作品。“世界がまるで変わってしまう一日がある。”ではじまるこの小説、今まで全く関わりがなかった分野に踏み込んで行く主人公の変化とその行動、そしてそれに続く人生が描かれている。読んでいる私自身にも全く初めての世界ではあったが、それはとても興味深く、スリリングでかつ心躍る世界であった。・・・・かと言ってその世界に自分が踏み込むことは恐らく無いとはおもうのだが。

波のうえの魔術師

 主人公である20代の就職浪人は、ある日70代の老人に出会った。主人公はこの小説の中ではつねに、この老人のことを、ジジイと表現している。この表現は決して相手を尊敬している訳でもなく、親しみを込めているわけでも無いのだが、やがて、彼はその老人のある面でのすばらしさを徐々に感じるようになる。
 トレーダーの世界、すなわち、株の売買によりその差額で利益を得る、つまり、投資家への道を彼は老人により叩き込まれて行くのである。単なる相場師ではなく、地道な調査と統計に裏打ちされた手腕でその老人は魔術師のように、利益を得る。波打つ株価、その動きを見据えて売り買いの時をつかむ老人はまさに“波のうえの魔術師”であった。
 しかし、老人はもっと大きな野望を持っていた。その背景にあるのは若い日の苦い思い出。バブルが華やかなりし頃、銀行と保険会社が結託して、多くの老人に加入させた“変額保険”。延々とバブルが続けば加入者は幸福な人生を送り、子孫にも資産を残してやれたのだがバブルがはじけると、その保険は加入者の全ての財産を取り上げ、さらに借金が残る物となる。無一文どころか借金を抱えた多くの老人の中には自ら命を絶つ物も多く出てきた。そんな保険を仕掛けた大手銀行に復讐すべく、この老人は主人公を手先にして「秋のディール」を仕掛けるのであった。ホームレス200人を使った取り付け騒ぎ、マイナーなテレビ局を使った、とりつけ騒ぎの報道。マーケットの動きは大胆でもあり、臆病でもありそして非常に制御しにくいものであるため、常に目が離せない。果たして秋のディールは一体どうなっていくのか?その手先となった主人公は・・・
 とてもスリリングであり、またワクワクする小説であり、一気に読みすすんでしまった。自分の心の中にはいつかはマネーゲームを・・・なんて気持ちがホンの少し芽生えてしまったかも知れない。

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