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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「骸骨ビルの庭」宮本輝(2009年)

大阪の十三(じゅうそう)が舞台のお話です。戦前からある“骸骨ビル”と呼ばれる古びたビルが舞台です。日本が中国侵略のために始めた戦争に負け、国民が廃墟と貧困の泥沼に陥っていた時代(1945年から10年間ほどの間)、多くの男は戦場に送り込まれ殺されており、残された者達は空襲で殺され、町中には親を亡くした子供達が多数“戦災孤児”として彷徨っていた。また、幸いにして空襲でも生き残ったが敗戦後日々の生活が出来ず、親に捨てられた子供“棄迷児”も多かった。それらの総数1948年2月の調査では123,500人という膨大な数であったとのこと。行政は全ての児童の保護が出来ず、多くの児童達は盗みなどの反社会的な行為によってしか生き延びることができなかった。
骸骨ビルの庭

 そんな中、大阪駅の北、淀川を渡ったところにある十三の骸骨ビルを相続した“阿部”と“その友人”茂木“が貧困の中で集まってきた児童29名を自分の人生をなげうって育てたのだった。
 物語はこの骸骨ビルを取り壊して高層マンションを建てるため、そこに住んでいる住人つまり、阿部と茂木が育てた戦災孤児たちを追い出すという使命を受けた主人公(八木沢)が、住人一人ひとりから聞いた身の上話を日記につづる形になっている。八木沢は孤児達(孤児といっても、充分歳をとり、一人で生活しているのだが)の話を聞いていくにつれ、徐々に彼らの生き方に感銘を受けていく。
 さて、此処に出てくる人達はそれぞれに仕事をして生きている。少々変わった仕事もあるが、探偵、特殊な書籍の製作、ダッチワイフの研究開発、オカマ、ヤクザ、金型製作、トレーラーの運転手、食堂経営などなど・・。それぞれに、魅力的なキャラクターであり、みんな遺骨ビルで育った孤児でありその結束は強いものがある。最初は疎んじられた八木沢も、彼らと話をしていく中で孤児達に受け入れられて行くのである。
 骸骨ビルの住人は、ビルに居座っているのではなく、あるひとつの問題が解決したらここを出ていくと行っている。全ての住人と話しをしたあと、主人公はその問題解決のために自分なりの行動をする。
 結局その問題は解決したのか?骸骨ビルにある謎の部屋は?文庫は上下2分冊になっているが、ページが残り少なくなっていくのが残念に思えるほど引き込まれる小説である。小説というよりも、敗戦直後の社会の描写、住人の生き方はどちらかと言えばノンフィクション的でありとても興味深い。
 ついでではあるが、主人公がかつて、骸骨ビルで育った比呂子の切り盛りする食堂で、手伝いをしながら教えてもらう料理のレシピ、とっても美味しそうでおなかがすくのである。
 

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