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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「無理」(奥田英朗)

何ともやりきれない小説である。登場人物5人のとっても厳しい人生をオムニバス形式で描いている。

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一人は県庁から出向中の市役所の生活保護担当の公務員。自分が担当したケース(該当者)を無下にしたばかりに付け狙われる。しかし、仕事の合間に主婦売春を利用し、挙げ句の果てに元妻が売春している場面に出くわしてしまう。

二人目は、暴走族上がりのインチキ商法をしている若者。離婚した元妻から子供を押し付けられ、最後には社長を殺してしまった先輩を匿う。

 三人目は新興宗教にはまったおばさん。対立する宗教団体のメンバーを引き抜いたことにより報復され、仕事であるスーパーの警備員をやめさせられる。

四人目は女子高校生。この子はかわいそうにゲームオタクの引きこもり青年に誘拐監禁されてしまう。

おっと、一人忘れていた。この物語の舞台である関東の片田舎、”ゆめの市”の市議会議員である。不動産会社を経営している親の代からの資産家だ。秘書と浮気をしており奥さんの高額な買い物にも文句が言えない。産業廃棄物施設の誘致で儲けようと考えているやくざ崩れの土建屋や隣町の議員からたかられ、最後には殺人の片棒まで担がされてしまうのだ。

本当にこの小説は、息もつかせぬ?悪い場面の連続であり読んでいても胸くそがわるくなる。でも、やめられない。

この5人のいろいろな隠し事が最後には一気に日なたへ引き出されてしまう出来事が起こるのだが、この小説のなかの一つ一つの出来事はあながちフィクションであるとは言いがたい。私たちの日常にも一杯あるような出来事である。

ついていない、運が悪い、努力しても報われないそんな八方塞がりの状況の中では人々は皆こんなふうになってしまうのだろうか?この泥沼から這い出るにはどうしたらいいのだろうか?

そんなことを考えさせられるので、あながちしょうもない小説とは言い切れないかも知れない。

 この小説の中に登場してくる人物でまともな者は市会議員の娘くらいか。

 本当に爽やかさの一つも無いこんな小説は珍しい。わたしの人生はいつも公明正大で、実直真面目に生活もしている。衣食住にも不自由していなくて、家族や友人、親戚はみないい人ばかり。毎日爽やかに寝起きしているといった恵まれた御仁で、たまにはこの世の中の泥にまみれてみたいと思われる奇特な方がいるとすれば、お薦めできる小説ではある。

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