FC2ブログ
 

2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

連載小説「松風寮の四季」第一章春はあけぼの  第5話 だれや!この食べ残しは!

 6月中旬、就職して2か月半、山口も藤木も仕事には随分馴れて来た。上司に「おい、山口っ、今日は、山手第一中学の側溝の険尺してきてくれ。」「へーい、了解しました。」といいつつ、ライトバンに乗り、朝から険尺へ、作業は1時間もかからずに終わり。後は、建設中の校舎の屋上で、朝寝。昼になると起き出して昼飯をなじみの飯屋で食べてから会社に帰るというサボり方も熟知した。なんといっても山口だけの夜の労働?がハードなため眠たいのである。

 内業半分、現場半分の仕事パターンなので結構腹もすく。日頃は会社の食堂で昼飯を食うのだが、飯はジャーからつぎ放題なので昼休みのチャイムが12時に鳴ると、真っ先に食堂へ駆け込み少なくともどんぶりに3杯山盛りの飯を食う。最近、1時前に食堂へ行った社員がいつも飯が無いとこぼしていたが、それが山口の仕業だとはまだ気づかれていないのだ。
 夜は松風寮の食堂で食うが、この寮には素晴らしい規則というかオキテがあった。それは、夜12時を過ぎると残っている飯やおかずは誰でも食べて良い!というルールである。実はこれは寮の規則には書いていない。寮生が暗黙の了解(実は了解していない寮生もいるのだが・・・)でもって決まったオキテなのだ。
 山口は残業の無い時は早々に寮へ帰り、まず、自分の権利である1膳目の夕食をいただく。その後、食堂でテレビを見たり、同期の藤木の部屋へ行って迷惑を顧みずにいすわり、広い藤木の部屋でプロレスをしたり、風呂に入ったりして時間をつぶす。場合によっては寮の古株近藤勇が薩摩白波を飲んでいるのでお相伴することもある。そしていよいよ12時、時計の針が12時1分をさすまえに、おもむろに残っているおかずを取り、飯をついで、今まさに初めて夕食を食べるかのごとき厳かさで、二度目の夕食を食べるのであった。その後、気の毒にも会社の為に遅くまで残業して帰ってきた寮生の夕食は既に無いのであった。12時過ぎに帰ってきた先輩寮生が、山口の飯を食っている姿を見つけるとこの世にこれ以上は無いと思うほどの憎しみを込めて山口を睨むのであった。
 山口は、素知らぬ顔で(寮のルールに則って食っているんだもんね)と言わんばかりに、飯を食うのであった。本当に厚顔無恥とはこのことを指すのだろう。
 ところで、この寮には変わったやつがいる。いままでこれだけ”変わったやつ”を見てきてまだいるのかと思う御仁もおられるかも知れないが、いるのである。
 そいつは名前を東海と言い、山口より2年先輩なのだがとにかく飯を食うのが遅い!飯を食うのが遅いだけでなく仕事も遅い。起きるのも遅ければ会社へ行くのも遅い。夜寝るのだけは早いのだが。東海が飯を食い始め、しばらくたつといなくなる。そしてまたしばらくたつと帰ってきて食事再開。またしばらくたつといなくなる。なにをしているのかと先輩に聞くと、苦々しげな顔で、「風呂にはいってんだよ。」という。「へー!食事中にトイレにいくは、風呂にまではいるのですか!!」山口は驚きのまなざしで東海を見たのであった。しかし、そんなことを全く気にしない東海は、まるで牛が反芻するかのようにのんびりと顎を動かしているのであった。

(この物語はフィクションであり、登場する、人名、団体名は全て架空のものです。しかし、架空といっても、何だかこんな情景あったなー・・・とか、こいつ知り合いに似ているな・・・・なんて思うこともあるやも知れません。が、それは単なる妄想です。そんなことあるはずがありません。決してありませんっ!)

スポンサーサイト



PageTop
 

コメントコメント


管理者にだけ表示を許可する