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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

連載小説「松風寮の四季」第一章春はあけぼの 第4話倉庫の宝の山

 春風そよぐ、心地よい4月終盤、ポカポカと暖かい日曜日であった。山口は連日の酒責めに少々疲弊しながらもまだまだ元気であった。

 この「元気である」という意味は両足の間が元気であるという意味である。どんなに先輩達に酒責めにされても、ふらつく頭をかかえて部屋に帰ると必ず一発は抜く。もっと元気な時は2~3発は行ける。山口の部屋にはテレビが無い、テレビどころかほとんど何も無い。あるのは布団と座卓がひとつだけである。ならばいったい何をオカズにしているのか?皆さんは不思議に思うだろう。
 実は、先日の日曜日、寮の先輩に連れられて・・・と言うか、拉致されて石山の町中を走る国道の高架下にあるホルモン屋へ連れて行かれたのであるが、この店がまたとんでもない所なのであるが、どんな所なのか、それはまた別の機会に譲るとして、その帰り、と、ある本屋を発見したのである。“雑誌・ビデオ 「大穴」”なんと奇妙なその国道沿いの本屋はどう見ても本屋には見えない佇まいだったのである。
 まず、普通の本屋は店先が明るい。そうでないと本の表紙が見えない。また、店内も基本的にはことごとく明るいものである。客が本や雑誌の内容を確かめて、これは所有するに足りる内容であるということを吟味できなければ本は売れない。特に年嵩の行った客はただでさえ細かい字が読み辛いものであるから、店内はとにかく明るくしてあるのが普通なのだ。そして、店の外からは、多くの客が入っていることがわかるように、表側はたいがいガラス張りであるのが普通なのだ。しかしこの店はまるっきり正反対である。店先は暗く、小さな看板がひとつだけ。入り口も狭く、まるで大勢の客を拒んでいるかのようである。そして、店内も薄暗く、客はいるにはいるが、あんまり顔は判別できない状態なのだ。そして置いてある本はすべてビニールのカバーがかかっており、そのうちの1冊を書架から取りだし、中を見ようと思ってもビニールが被って入るために開くことができないのである。
 先輩はニタリと不気味な笑みを浮かべながら、「2~3日で交換だぞ。」と言う。山口は先輩の言う意味がわからなくて、あいまいに返事をしながら、写真集と思われる本を1冊取り、お付き合いで購入した。薄い本なのだが1500円もしたので、きっと有名な女優の写真集だろうと思ったのである。
 狭い店の中には山口と同じ年代とおぼしき客や、寮の最高齢である50ウン歳の先輩と同年配に見える客もいたが、みんな一人で来ているようだ。そして、なぜだかみんなそわそわと落ち着かないそぶりで、高価な写真集を2~3冊わしづかみにすると、レジに小走りに行き、金を払ってそそくさと帰ってゆく。山口は変な店だが客相も変な人が多いなと思った。
 で、手にいれた写真集を部屋に持ち帰り、早速ビニールを引き裂いて中を見て見ると・・・山口は目が点になった。そ、そうか。これが巷で囁かれているいわゆる”ビニ本”だったのか!そこでようやく、山口は店の雰囲気や客の素振りに納得がいったのであった。どうりで文芸春秋や中央公論は置いていないはずだ。山口は自分の鈍さを再認識したのであった。
 ということで、この女優の写真集?がその晩からの山口のオカズになったのであった。
 そしてまた、ある日曜日、寮の倉庫へゴミを出しに行った。寮生は、自分の出したゴミは、自分でゴミ一時集積場所である倉庫の入り口の大きな木箱まで持って行く決まりとなっていた。そこで山口は、何やら見慣れた表紙の雑誌の束を見つけた。なんと!それはいつぞや、国道沿いの本屋”大穴”で買ったのと同じシリーズのビニ本であった。こんなお宝を捨てるなんて・・・。とつぶやきながら、はやる気持ちを押さえつつ、回りに人影が無いのを確かめると、その本の束をセーターの中に隠して、部屋へと急いだ。2階から3階に上がる階段で、運悪く冷蔵庫のビール担当、宮木に出くわしてしまったが、ビニ本で膨れたセーターの腹を押さえながら、「ううっ、腹が痛い!下痢かな?」と苦しい嘘をつきながら部屋へと戻ろうとした。しかし、いつも冷たい宮木がこの時に限って親切に山口に声をかけてくる。「どないしたんや?便所は今来た方向やで。」「い、いや、今便所にいったけど、腹が痛いので、先に“正露丸”飲もうと思て。ほな、サイナラ!」
何だかわけのわからない、言葉を投げ付け、あたふたと階段を上がって行ったのであった。
 その夜から、山口は大変であった。最初のあいて?は日暮里アケミちゃん、お次は花園マリエちゃん、三人目は工藤かれんちゃん・・・はあはあ!4人目は・・・もうあかん。まるで悪癖を覚えた猿そのものであった。翌日以降数日は、目の回りにクマが出来、職場の回りの者がどうした!と心配してくれたのだが、その理由を話すわけにもいかない山口であった。

(この物語はフィクションであり、登場する、人名、団体名は全て架空のものです。しかし、架空といっても、何だかこんな情景あったなー・・・とか、こいつ知り合いに似ているな・・・・なんて思うこともあるやも知れません。が、それは単なる妄想です。そんなことあるはずがありません。決してありませんっ!)

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コメントコメント


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煩悩の塊り四方山さん
>回りに人影が無いのを確かめると、その本の束をセーターの中に隠して

聞いた話なんですがネ、就職後暫くして横浜に有るYMACの夜間学校で習い事をしてました。
 授業が終るのは20時で、それから近所のお店でパンなんぞを買い求め道路向かいの公園ベンチで粗末な晩飯をもそもそ食ってから近隣の関内駅で電車に乗り帰宅してたのです。
 或る日も同じ様に?と思ったのですが何故かモヤモヤした気分でとことこ歩いて伊勢崎町。
 奇麗なおねぃちゃんがオイデオイデとするのですが赤貧の身の上とあらば立ち寄る訳にも参らずモヤモヤは募るばかり。
 更に歩いて桜木町駅に向かう道すがらフト左手を見ると??その本の自動販売機が!
フラフラと吸い寄せられる様に販売機の前に立つと左右に誰も居ないコトを確かめて小銭入れに有った百円ダマを注ぎ込みボタンを押すと??
出ません(涙)・・・焦りつつボタンをガチャガチャ押し続けそれでもダメと判りヤケで足で蹴っ飛ばすと?
 ガタガタガタと言う大音響と共に取り出し口からその本がドッサリ出て来ました。
 慌てて大汗こぃてリュックに押し込み、それでも入り切らないので先程パンを買った時に貰ったビニール袋に詰め込み外から判らない様にテキストを表に差込んで帰宅し慌てて中身を見ると???全部同じ本でした・・・・(号泣)。
 全部読んで戴いた皆様に感謝します。(これ聞いた話ですからね)

うんちく | URL | 2012年06月25日(Mon)23:00 [EDIT]


うんちくさん
聞いた話にしちゃー随分リアルですねー、持ち帰ってみんな同じ本だったら、ビニールかぶったまま友人知人に売り歩くでしょうね、私の場合は。それも、苦労して手に入れたということにして、プレミアを付けてね。
 所で、私の場合も聞いた話なんですが・・・500円玉をいれて反応無し。蹴り倒そうと思ったけど、怖いお兄さんが出てこないかと心配で泣き泣き帰った・・・・という話しを聞きました。なんだか、文句を言いにくいシチュエィションを逆手に取ったあくどい商売ですね。

四方山果無 | URL | 2012年06月26日(Tue)00:00 [EDIT]


>文句を言いにくいシチュエィションを逆手に取ったあくどい商売

ででで・・・ですから更に聞いた話しなんですがね、(クドイ)。
 或る事でオカモトさんの無い事に気がつき慌てて部屋を飛び出し御近所の寂れた薬局に走りお店の軒先に有る小さな赤い箱にコインを・・小銭が足りず、更に慌てて夜中迄やってる食料品店に走り要りもしない卵を買ってお釣りを貰い薬局にUターン(ゼイゼイ)。
 赤い小さな自販機にコインを投入してレバーを倒すと???でで・・・出ない。
 何度も何度もレバーを倒しても蹴っ飛ばしても出ない(号泣)。
 で?その後の顛末でつか?聞いて無いので判りませんけど?(ドーシテモ聞きたい場合はにゃまビール一杯でゲロします)
 因みに我が尊敬するサイバラ画伯はその自販機を指して「あれは意地汚い薬局のオバハンの貯金箱の如き物である」てな事をその著書??作品名失念・・・失礼。
 でわ!
 

うんちく | URL | 2012年06月27日(Wed)20:55 [EDIT]


うんちくさん
なかなかためになりますねーうんちくさんの”聞いた”話しは・・・。
「意地汚い薬局のオバハンの貯金箱の如き物・・・」おー!!言い得ていて的確ですね。しかし、その薬局のオバハンは兎に角罪深い!してはいけない事をしていますね。それが元で他人がとんでもない不幸に陥るという想像力が働かないのでしょうかね。それは悲しいことです。(別に力を入れて言わなくてもいいのですが・・・。)

四方山果無 | URL | 2012年06月27日(Wed)21:28 [EDIT]