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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「星の降る町(六甲山の奇跡)」明川哲也

神戸に住む不良中学生が一夜の孤立体験から見いだす生きる意欲のお話。全編がほとんど話しことばで記述されており、それも親しみを感じる”神戸ことば”である。(もっとも、馴染みのない方には親しみもなにも無いかもしれないのだが・・・。)

 

 中学生のトルリはもっと子供の頃、近所の洋菓子屋へよく遊びに行き、その店の主人サジが粉をこねたりオーブンで焼いたりするのを見ていた。中学生になり、友達の間で粋がるために万引きをするようになる。まあ、よくある話ではある。仲間達と欲しくもない物を万引きしては自慢しあっていた年代も過ぎ、次第に友人達とは距離が出来ていく。
 
トルリの家には幽霊が出る、しかしそんな話は誰も信じてくれない。それどころか担任の教師にその話をクラスのみんなの前でさせられ、話が終わると担任はトルリを馬鹿にする。クラスの皆も担任に迎合する。トルリは学校の中でだんだん孤独になって行くのだ。

 集団の中での孤独、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」に通じる所がある。

 サジの店でサジの作った洋菓子を万引きしたトルリはサジに見つかり自転車で追いかけられる。町はずれの古い給水塔に登ったが、そこまでサジは追いかけてくる。そして、サジがトルリのいる給水塔の上まで来たとき、給水塔の古いハシゴが崩れ落ち、二人は給水塔の頂上に取り残されるのだ。最初は助けを呼ぶのだが山奥の古びた給水塔の近くには人気は全くない。実は物語はここから始まる。

  折しも大流星群の日、流れる星を見ながら夜が明けるまで交互に語る二人、幼かった頃の話し、流れ星が落ちた家は大きな転換を迎える話、金平糖の話、トリルの学校での話、100円の商品には200円の心がこもっているという話、幽霊の話、それらの話しの中でトルリが理解したことは「何かを失えば何かを得ることになる」ということ。

 寒い給水塔の上で、昔、戦争に行かされた時患ったマラリアの症状が出てきたサジは生死の間をさまよい始める。サジを気遣い自分のパーカーを着せてやるトルリ。やがて夜が明け始めたとき二人は・・・・。
 
 子供から大人へと成長していく過程においての不安、社会に対する反発、自信の喪失、疎外感、孤独・・・・。だれもが歩んできた道であるが、みんな忘れてしまっているそんな時代を思い出させてくれるお話です。

 

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