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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「恋細工」西條奈加

 「金春屋ゴメス」西條奈加は、この小説の印象があまりにも強かった(面白かった)。今回も実はその乗りでこの本を借りたのだが、ちょっと趣が変わっていて、へー西條さんはこんな類の小説も書けるんだな・・・。と少々驚きました。

恋細工

 「恋細工」は天保時代を背景にした歴史小説。錺職の椋屋(かざりしょく:櫛やかんざし、みこし飾り等を製作する職人)の家に生まれたお凛は、4代目当主の義妹、そして、実はみずから“かんざし”や櫛を作る職人でもある。4代続いた錺職椋屋。姉の亭主である椋屋4代目宇一亡き後、5代目を誰にするのか・・・4代目が残した遺言どおり、椋屋の運営を託されたお凛は5年後の跡目を決める時まで遺言を護り椋屋を支えて行く。

 当時は錺職など職人の世界は男だけの世界であった。女はたとえ素晴らしい才能にめぐまれていてもそれを認められない時代だったのである。その中で、お凛は密かに素晴らしい作品を残して行く。また、遺言にもとづき時蔵という新しい職人を椋屋に向かい入れ、平戸という新しい手法を導入してゆくのである。

 お凛と時蔵との仲は・・・・?なかなか予定調和とは行かない、しかし、ことある毎のふれあい、すれ違いがなかなか気を持たせてくれる物語なのである。

 かの、老中水野忠邦が行った“天保の改革”で贅沢品が禁じられた時代、椋屋の職人そして、江戸の庶民みんなを元気づけようと、お凛と、幼馴染みのお千賀とは大きな企みを持つ。しかしそれは莫大な金がかかり、お上に見つかればお縄頂戴となる危ない仕事であった。

 見せ場は神田祭御祭礼の場面、江戸っ子の前に姿を現した物は・・・・?そして椋屋とお凛はどうなったのか?時蔵は?ここから先も思っている筋書きどおりに物語は進まない。

 物語の要となるのは“平戸”という錺職人の手法。細長く伸ばした銀の糸、これを撚り合わせ、さらにその糸で、花びらや、蝶の羽根などを作って行く。話しは少々脱線するが、その昔インドネシアへ旅行した時、ジョグジャカルタの銀の細工工場でこの作業を見たことがある。若い女性が器用な手つきで、細い銀の糸をクルクルと巻き、面積のある花びら等を作り、それをブローチやイヤリングにしていた。とても繊細で美しいものであった。その当時はそれが“平戸”という手法であることなど知るよしもなかったのだが・・・。

 さて、“平戸”というその手法は恐らく南蛮あたりから日本の平戸に着き、そこから広まったので“平戸”という名前が付けられたとのことであるが、(ちなみにこの技法は現在もある)この美しい造形が、お凛に素晴らしい作品を作らせ、終章ではその作品が思わぬ展開を見せるのである。予定調和を望む?多くの皆様(私自身も含みますが)としては、その結びを果たしてどうお感じになられるか?

お凛ちゃん


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