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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「東京島」(桐野夏生)

桐野夏生の漂流物。世界1周のクルーザーによる航海中にフィリピンの近くで遭難した清子とその配偶者。その島に与那国島から、きつい労働に嫌気がさして逃げ出して来たプータローたちも遭難してたどり着く。
東京島

 そしてさらに中国人の集団がそこに捨てられる。好まざる烏合の衆が、この島に閉じ込められ、何年も暮らして行く物語り。
 既存の漂流物は、まず、島にたどり着くのは圧倒的に男一人のシチュエイションが多い。「ロビンソンクルーソー」しかり、池澤夏樹の「夏の朝の成層圏」しかりである。しかしこの小説は人がどんどん増えてくる。
 生活様式も、他の小説は序々に持っている物を利用して、生活レベルを上げて行き、いろんな困難に打ち勝って、最後は助け出されるというものが大半である。しかし、この小説はあんまり、生活のスキルを向上するような所はなく、南の島で食料にはとりあえず苦労が無いという背景の元、あんまり切迫感の無い生活をだらだらと送っているのである。小説の中心となっているのは、清子が回りの人間たちとの関係をどのように解釈し、どのように利用し、どのように言い訳するかという内容である。
 清子は少々齢はとっているが、東京島と名付けた無人島での唯一の女性である。彼女はその立場を利用して、奔放に振る舞い、自分の夫が死んだ後、次々と新しい夫を選び、セックスとの引き換えに、夫を使役するのである。中国人がその島を脱出するためのイカダを作ると、今までの夫や、日本人との関係を簡単に捨てて、とっとと逃げて行く。そして、それが失敗に終わった後も理屈をこねて、また日本人たちの中に戻っていくのである。
 今までの漂流譚とは一風異なるこの小説は、クライマックスもまた突飛である。事実も小説も今までの漂流譚のように綺麗事ばかりでないのは確かなこととは思う。しかしこの小説は見事に読者の気分を悪くしてくれるものだと私は確信する。ま、気分がわるくなるか、ならないかは人によっても異なるだろうから、ぜひとも一度読んで見てどう感じたか教えてほしい。ユニークな小説であることは間違いない。

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コメントコメント


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漂流モノは我が敬愛する吉村昭先生の著作に多く見られます。
 ゼヒご一読を。
所でワタクシ学生時代に与那国島にたどりつき1週間程砂糖黍絞りのバイトしてました。
 空き地の真ん中に大きな臼が有りその臼に繋がってる棒を押してクルクル廻ると黍から甘い汁が出るのです。
 いつもは牛がやるのですが繁忙期になると人間が牛代わりにクルクル♪
 そう言えば北海道では黍ならぬ乳搾りのバイトもやってました。
 で?もしかして四方山さんは北新地で乳搾りでも??(爆)

うんつく | URL | 2011年04月06日(Wed)23:47 [EDIT]


うんつくさん
 ヨーロッパ放浪の旅以外にも日本最西端与那国島も行ってたんですね。羨ましい。
 佐渡の金山で金鉱石の採掘はしてませんでしたか?腕に入れ墨入れて?
 ところで北新地って牧場ありましたっけ?

四方山果無 | URL | 2011年04月16日(Sat)13:08 [EDIT]


詮索四方山さん
>北新地って牧場ありましたっけ?
 はいはい!ワタシは行った事無いんですがね。
詳細はT川流さんにお聞き下さいませ(再爆)。

うんつく | URL | 2011年04月17日(Sun)09:23 [EDIT]