
隣の家の同じ年の男子高校生が金属バットで母親を撲殺した。逃げる高校生を幇助する少女4人。その結末はとても厳しい結果となってしまう。メインのストーリーはそれ自体がセンセーショナルではあるが、ここに登場する女子高生一人一人の心の中もそれぞれに重く複雑な事情を抱えていることが分かってくる。
少女たちの生活から反射的に見える大人の世界の現実的で泥臭い部分。大人達がそれを重大なこととしている事柄が彼女たちから見れば、ばかばかしい些事と感じ、それよりもさらに深い自分自身の問題に悩んでいることがここで改めて知らされるのである。17歳の少女たちの心の中は純粋で繊細で悩み深くて、それ故に現実に起こった事象にはうまく対処出来ないもどかしさが表されている。
果たして今の高校生にとっての「取り返しがつかなくなる事」とは・・・そしてなぜこの小説の題名が「リアルワールド」なのか?これがこの小説でのポイントである。
世辞に長けてほしくはない、でも、純粋に生きるがために行き詰まり、容易に人生をリタイヤするなんてことはしてほしく無い・・・・。こんなことを安易に望む自分はやはり、今の高校生の心の中を理解しもせず勝手な事をいっているだけの大人なのだろう。
なんとこの世を生きていくことは難しいことなのかを改めて思わせられた小説であった。


