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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「リアルワールド」桐野夏生

 8章構成のすべてが登場人物の語りで構成されている小説。女子高生の複雑な心の内を描いている。高校時代からすでに30数年経過しており、昔の自分の世代ではともかく、昨今の高校生の心の中は全く解らない自分がここにあった。彼女達の思いや行動はあるところでは共感も持てるし、心の中を理解出来る部分もあるが、しかし、その大半は驚きであった。今の高校生が読めばここに書かれている気持ちの大半は理解できるのだろうなと思うと自分はずいぶん遠いところまで来てしまったんだなと少々寂しい気持ちになる。

 隣の家の同じ年の男子高校生が金属バットで母親を撲殺した。逃げる高校生を幇助する少女4人。その結末はとても厳しい結果となってしまう。メインのストーリーはそれ自体がセンセーショナルではあるが、ここに登場する女子高生一人一人の心の中もそれぞれに重く複雑な事情を抱えていることが分かってくる。
 少女たちの生活から反射的に見える大人の世界の現実的で泥臭い部分。大人達がそれを重大なこととしている事柄が彼女たちから見れば、ばかばかしい些事と感じ、それよりもさらに深い自分自身の問題に悩んでいることがここで改めて知らされるのである。17歳の少女たちの心の中は純粋で繊細で悩み深くて、それ故に現実に起こった事象にはうまく対処出来ないもどかしさが表されている。
果たして今の高校生にとっての「取り返しがつかなくなる事」とは・・・そしてなぜこの小説の題名が「リアルワールド」なのか?これがこの小説でのポイントである。
 世辞に長けてほしくはない、でも、純粋に生きるがために行き詰まり、容易に人生をリタイヤするなんてことはしてほしく無い・・・・。こんなことを安易に望む自分はやはり、今の高校生の心の中を理解しもせず勝手な事をいっているだけの大人なのだろう。
なんとこの世を生きていくことは難しいことなのかを改めて思わせられた小説であった。

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コメントコメント


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私はカタログ人間で本は読めません(涙)
ですが、奥さんが図書館から借りた単行書がいつもあります。
この本も読んだことがあるそうです。
機会があれば、声をかけてやってください。

Gやん | URL | 2010年12月19日(Sun)07:58 [EDIT]


Gやんさん
コメントありがとうございます。
通勤片道2時間は結構辛いですね。Gやんさんはもっとかも知れませんが。
その時間を利用して友人から紹介してもらった小説を読んでいます。その中で特に面白かったやつは稚拙ですが感想を書いています。
”そらあんた、読み方間違えてまっせ!”なんてことがあればコメント頂ければ嬉しいです。

四方山果無 | URL | 2010年12月23日(Thu)08:57 [EDIT]


すべてにおいてお世話になりました。
よいお年を。

Gやん | URL | 2010年12月31日(Fri)23:17 [EDIT]


Gやんさん
 こちらこそ大変お世話になりました。
今年ももう後少しですね。来年もよろしくお願いいたします。

四方山果無 | URL | 2010年12月31日(Fri)23:45 [EDIT]