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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「メリーゴーランド」(荻原浩)

 メリーゴーランド
日々過酷な仕事に追われる大手家電販売会社をやめ、地元の市役所に再就職した主人公。東京から陶芸教室に通ってきていた女性とも結婚し、日々のんびりとした人生を送っていたのだが、ある時、内部配転を言い渡された・・・・。

 「アテネ村リニューアル推進室」アテネ村とは主人公のつとめる市が巨額の税金をつぎ込み作ったテーマパーク・・・・とは名ばかりの崩壊寸前の施設であったのだ。毎年数十億の赤字をだしながら、閉鎖もせず、市長の思い入れで存続しているような所なのだ。ここをテコ入れして単年度黒字に持っていくというのが、新しい仕事であった。
 しかしながら、小さな地方都市、「休まず、遅れず、働かず」と、三拍子そろった市役所職員。ただただ気にすべきは、上司のご機嫌・・・・と、かなり地方公務員を諷刺している。かつて「青年市長!」と大きな期待を持たれていた市長も、今や、6期も続いた無投票当選の末、地元土建業者との密接な関係、女性問題。実はこんな話しどこにでもころがっているもので、本当につまらない。
 ま、こんな背景の中で、主人公啓一はかつて民間企業にいた時の友人とか、一時期かかわっていた劇団の主宰者とか、親しい宮大工とかをたよってアテネ村のゴールデンウイークのイベントを成功に導く。そして、啓一の活躍に協力してくれる部下や、イベント企画会社の社員も出てきた。このあたりのくだりは大変面白い。
 イベントも終わり、啓一は市長から絶大な信頼を得た。さて、めずらしく対立候補が2名も出た市長選に啓一は複雑な思いであった。市長派と見られている啓一は投票時、投票用紙とともに、薄紙を1枚渡される。投票用紙の下に敷き、筆圧を高めて書くと、投票用紙に記載した名前が写るというしかけである。これにより仲間内から裏切り者が出ないようにしているのだという。なんて姑息なやりかた!逡巡した啓一は辞表を書く心境で対立候補の名前を書いた。
 この選挙の結果も興味をそそるものであるが、行政というものは、為政者によって翻弄されるものである。これは市町村であっても国であってもあまり変わる物ではない。候補者は公約でもって国民・市民の支持を得て当選し、当選した暁にはその公約を実行することが責務となる。いままで、は今までの方針に従いより良き方へ向かって努力をしてきたものが、一夕にしてがらりと方向が変わるものなのである。
 そんな状況の中では、行政の立場にいる人達は、やるべき仕事を進めて行く中で大きく意欲を削がれる場面もたびたび出てくるのだろう。中には、最初に述べた”働かない”市役所職員になる者もいるだろう。しかし啓一はそうではなかった。
 最後に啓一がメリーゴーランドに乗りながら思ったことは素晴らしく印象的であった。一人一人のキャラクターがよく描かれており、面白く読み応えのある小説でした。

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