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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「空飛ぶ馬」北村薫

 本書は北村薫氏のデビュー作とのこと。私が初めて北村薫氏の小説を読んだのは「街の灯」だった。本当は友人からこの「空飛ぶ馬」をすすめられていたんだけど、あいにく貸し出し中であったため、チャーリー・チャップリンの映画をイメージして図書館で借りたのだが、これが全く関係ない内容。でも、謎の運転手ベッキーさんと、裕福な家のお嬢さんの物語はその時代背景、特に人々の生活がリアルに描かれており、臨場感ある小説だった。ということで、初めて北村薫氏を知った私が次に借りたのがこの「空飛ぶ馬」でした。 空飛ぶ馬

  空飛ぶ馬は5つの短編よりなっていて、各々が別の話ではあるが、主人公の女子大生(19歳~20歳)と噺家である円紫(30代後半?)の二人が日常で起こる「事件」とはいえないまでの出来事を解いていく物語だ。主人公の女子大生は、とっても純粋でボーイッシュでさわやかなキャラクターである。そして噺家円紫は思慮深く、明晰な頭脳の持ち主で、その落語は円紫のアレンジにより、きついユーモアのある”お題”についても心温まる”落ち”でしめくくり、聞いている者の心を和ませるのである。ちょっと出来過ぎた二人だとは思うが、読んでいてとてもさわやかである。  第一話では、女子大生と円紫の出会い、そして、その橋渡しをした、大学教授の見る”夢”(寝ていて見る夢です)の解釈をしていくというお話です。円紫の推理が冴えます。   第二話は喫茶店での女性客の異常な振る舞い。その解釈と解決を円紫自身が行います。  第三話は女子大性が友人達と蔵王へ旅行へくという楽しいシチュエーション。ここでも主人公の魅力的な二人の友人が出てきます。友人達との語らいがかわいらしい。お話は旅先で知り合った小さな子供を巡るちょっとかわいそうなお話ですが、ここでも、円紫の推理が冴えています。  第四話、こちらは主人公の昔なじみの女性を巡る出来事。その女性は絵本作家であり、「赤ずきん」という童話にまつわるバリエーションなどが披露されています。作者はかつて国語の教師であったことなどから、このあたりの蘊蓄は結構なものがあります。お話自体は男と女のちょっとドロドロとしたお話です。  第五話、この本の題「空飛ぶ馬」です。こちらは心温まる出来事です。主人公のご近所の幼稚園児のクリスマス会での出来事。このお話の中で、主人公は20歳になります。  日常の中で、起こる出来事、一見理解出来ないことを円紫が見事な洞察力で、解明していくというのがこのお話のキモですね。話の中に出てくる古典文学や落語に関する作者の蘊蓄もなかなか勉強させてくれます。よい小説でした。ちなみにこの女子大生と噺家の登場する小説はこのあと、まだ三作あるそうなので次を読むのが楽しみです。

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コメントコメント


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自己レスです。
この小説を勧めてくれた友人からのご指摘。
このシリーズは全部で5作あるとのことでした。

四方山果無 | URL | 2010年07月14日(Wed)07:12 [EDIT]