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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「リセット」(北村薫)

 よかったです。最初に読み始めた時には題名からは想像出来ない展開でした。もっとも、題名からは小説の内容は想像できませんが。戦時中の女学生の心中。この小説のとおりかどうかは私には全く解りません。

でも、そんな人もいたのかなということは想像できるような気がします。三部構成の第一部は戦時中の女学生の世界でした。小説の半分はこの部分が占めていました。起承転結の起承の部分が第一部だったのですが、延々と続く、戦時中の女学生の生活と心の移ろい。この段階からは、全くその先の展開が読めません。第二部に入って、今度はずいぶん時代が下り、入院中の全く関連のない男性のお話。その男性が自分の子供たちに残そうとしている、自分の子供時代の出来事。それを吹き込む録音テープ、そこに第一部との関連が公開されるのです。そしてさらに第三部、めまぐるしく舞台は替わり、第二部の男性が若かりしころの出来事。ここでまた新たな展開、当然第一部、第二部と関連があります。「あり得ない話、だけども、あってほしい話」これがこの小説の全てです。キーワードは「獅子座流星群」それと「フライ返し」悲しいけど、暖かい、不幸な中の幸せ。心の振幅を大きく振ってくれる小説です。
 浅田次郎の「鉄道員(ぽっぽや)」やそれに類する小説が描く「奇跡」。そのような類の小説と言えるでしょう。(その時代の)動かしがたい現実、その中での(自律的でない)悲しい別れ、どうしようもない不幸の中で、人が救われるのは奇跡しかない・・・・?ちょっと危険な思いかもしれないけど。幸いそれは小説だからいいものの(ただし、戦時中の現実は現実としてある)。
 こんな非現実の世界に心動かされるのは本当に不本意だけど、でも、当然背景が異なる現在もそんな世界を求めなければやっていけない状況があるのも事実である。だから北村薫や浅田次郎が読まれるのであろうと思う。
 もし、現在の社会をとらえたこのような類の小説が出現すれば・・・・、そんな状況が出現するまでに、なんとか今のこの社会をよくしなければ・・・・。なんて屈曲した読み方をする私は危惧しているのです。
 
 

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