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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「のすたるぢや」

 萩原朔太郎写真作品「のすたるぢや」新潮社1600円
朔太郎はステレオ写真を好んでいた。利根川のほとりの自画像や、道の写真はよい。朔太郎は道の写真が好きなようだ。

また、阪急電車石橋駅の昔の風景などもある。水の流れ、細いあぜ道、鉄道線路、馬車か荷車の轍のついた道、そんな道の写真が多く出ている。モノトーンであるためか、全体的に寂しげな写真が多い。風景だけでも寂しいが、人物が入るとさらに寂しく感じられるのは、人物が一人だけ。しかも、さびしげなポーズであるからだろう。萩原朔太郎は言わずと知れた、詩人である。この詩人の感性、特に「ずっと続く道」に共感を覚える。
 巻末の朔太郎の文章を転記する。「元来、僕が写真機を持っているのは、記録写真のメモリーを作る為でもなく、また、所謂芸術写真を写すためでもない。一言にして儘せば、僕はその器械の光学的な作用をかりて、自然の風物の中に反映されている、自分の心の郷愁が写したいのだ。・・・(中略)・・・そしてかかる僕の郷愁を写すためには、ステレオの立体写真にまさるものがないのである。
 たしかに写真というものは、どこか、郷愁の代名詞的なところがある。セピア色とはまさしく郷愁のことである。古びた写真のその姿と共に、過ぎ去った過去がその中に記憶(この場合記録ではない)されているそれが写真である。

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