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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「夏の朝の成層圏」池澤夏樹

夏の朝の成層圏 池澤夏樹
 ふわふわとした雰囲気の小説である。内容はロビンソンクルーソにも匹敵するような、遭難小説なのに。遭難した人間は心細さと外敵の恐怖と、飢餓や、猛獣の危険を身に受け、自覚する、しないに拘わらず無理やりにも生き生きと生きさせられるものなのに。この主人公は一体全体生きようという本来人間やその他の動物が持っている本能があるのであろうか?
 

 もっとも小説であるからその主人公の性格は作者が自由に決め得るものなのだから、たとえそれが現実離れしていようと苦情を言う筋合いはない。ただ買わないだけだ。しかし買わないけど図書館で借りて読んでしまった。読んでしまった後で別に時間を無駄にしたとは思わなかった。それなりに面白かった。 
 不慮の事故で、はた目から見れば悲惨な状況に陥ってしまったにも拘わらず主人公はむしろその状況にを好意的と思われるほど歓迎している節がある。
 前半は、船から海へ転落するという事故が起きてから、無人島に流れ着き一人で生活し隣の島で、映画俳優マイロンに出会うまでの逡巡。後での半分はマイロンとの生活と離別。そして、巻頭と最後を主人公が現実社会へ帰るための、リハビリとしての手記の作成風景がある。
 この小説はこの島の中でしか完結し得ない流れになってしまっているようだ。日本に帰りかつて所属していた文明社会?に復帰する場面はあまりに繁雑で、今までの小説の流れである主人公の心の内面の記述が大半であった流れから、は大幅に場面が変わってしまう。小説全体の雰囲気を保つためには、場面を変えるのは不可能に思われた、そして実際その場面はなかったのだ。

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