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2台のクーペと”四方山果無(よもやまはてなし)”World

書評「ムーン・パレス」イアン・マキューアン

 ブログを更新したのが1ヶ月前だとは今日初めてスポンサーサイトからの記事が載って気づきました。
 てなことで・・・書評でも。
この小説は東京の私の友人の友人に紹介してもらったものです。

 著者ポール・オースターの自伝的作品だと思う。
 あらすじは母を亡くし、その後面倒をみてくれた叔父を亡くして天涯孤独になってしまった主人公マルコが、自暴自棄になり、命を落とす寸前に友人に助けられ、祖父に会い、また父に会うというお話。

 第一印象として感じたのがこの物語の底に流れている締め付けられるような孤独感が痛々しい。それを癒してくれたのが、キティ、しかし彼女ともその後別れる運命にある。前半は自分自信の人生を見つけられないままセントラルパーク周辺を彷徨し、危うく命を落としかける場面。中盤はひょんなことで知り合ったキティとともに暮らしながら、気むずかしい老人の世話をして生きてゆく日々。
 その老人が亡くなった後、老人のただ一人の息子バーバーに会い、老人の足跡を二人でたどることを決めた後に、バーバーが自分の父であることがわかる。後半は自分の父バーバーと死別した後に祖父の足跡を探す日々。
 1970年代この時代の若者の孤独感、人生に対する目的の喪失、人生を見つけるための放浪。これらが濃厚に描かれている小説である。主人公が一番目的意識をもって人生を送れたのは、祖父(と行っても当時は自分の祖父とは知らずに世話をしていた一人の老人なのだが・・・)とともにその祖父の死亡記事を書く日々であったのだと思う。
 何という偶然(そりゃあ小説だもの、どんな偶然でも創出することが出来るのだが・・・)自分が世話をしていた(実は自分の祖父となる)エフィングの息子バーバーが自分の母の教師であり、たった一度の逢瀬で出来た子供が自分であった。しかも、エフィングと知り合ったのは本当に偶然のことで、主人公が長い間エフィングの世話をしている時はエフィングが自分の祖父であることを全く知ることがなかった。そしてそれはエフィングの側も同じであった。
 エフィングの若き頃の冒険話、マルコの心情、父バーバーの人生、どれも趣きは異なる話ではあるが、非常にうまく結び付けられ小説全体のまとまりはよい。
 中華料理店「ムーン・パレス」から始まる「月」というイメージもこの小説のキーワードのひとつとなっている。月は、インディアンの心象世界では「明日」を表す言葉であり、画家である祖父エフィングの友人の月の絵の印象。マルコが放浪の末、行き着いた太平洋岸で見た月もこれからの人生の始まりであることを決意させるものであった。
 孤独と闇の中で必死にもがきながら最後には自分の人生の展望がようやく見えてきた。非常に多くの余韻の残る小説であり、70年代に若者であった世代(私はそれよりちょっと若い世代なのだけど)の心象を色濃く表現している小説だと思う。

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コメントコメント


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エロ系の業者のカキコミも無くなってますがな(爆)。
 ワタシはつい先日本棚(実は古いテレビ台)をひっくり返して読まない本を捨てるつもりが読み耽ってしまいやたら時間がかかって結局減ったのは数冊のみ。
 狭くて良いから書斎が欲しいです。
 

うんちく | URL | 2008年11月30日(Sun)06:23 [EDIT]


うんちくさん
 おはようございます。
私は雑誌以外の本を買うのをやめました。買った本はなかなか捨てられず、(雑誌なら捨てられる)たまっていく一方なので、もっぱら近所の図書館を利用しています。住民税以上の利用価値はあるのではないかと・・・(セコイ)

四方山果無 | URL | 2008年11月30日(Sun)06:48 [EDIT]


と!思ったら

↑こう言うカキコミを信じて金払うバカが居るんでしょうかね?
 てかこんな事にエネルギーを費やす輩が居る事自体悲しい気持ちになります。

 >買った本はなかなか捨てられず
 御意ですな、朝出勤する駅迄の道すがら本もそうですがCDが紐で括られ捨てられているのを見ると信じられない気持ちになります。
 「捨てるなら最初から買わなきゃ良いじゃん」ってつい思ってしまいます。
 近頃某ホンダさんのCMに限らず良い楽曲はは時代を超越するもんです。
所でそんな捨てられ無いLPレコードが山程有るんですが・・・プレイヤーが無い(涙)

うんちく | URL | 2008年12月01日(Mon)20:46 [EDIT]