

この映画は1984年(昭和59年)九州福岡柳川を舞台としている。死んだ町というイメージで柳川を位置づけ、未来がないという。そこに住んでいるヒロイン達も自分自身の未来はないという。止まったような時間(映画の中でも江口の携帯時計は止まっている)、ただただ時間をすごしている。街が自由を束縛する。等等、柳川のイメージ(今まで私が描いていた)とは随分異なるシチュエーション。しかし、そもそも、福永武彦の原作は柳川ではないどこか架空の町なのであるが。
没落した名家の姉妹の妹安子(小林聡美)がヒロイン。姉郁代(根岸季衣)はプライドが高く、人間らしい感情を押さえ込む性格。反面妹は明るく、無邪気でお転婆。しかし、究極的には姉とかわらない性格がある。
この映画はひと夏を卒業論文を書くため、柳川の旧家に居候するようになった大学生江口(山下規介)の語りで進んでいく。柳川の旧家を訪れた最初の夜、女性のすすり泣きと、川船の音が聞こえてきた。旧家の娘安子(小林)と日々を過ごす中で、旧家の人々の事やそのすすり泣きの意味が徐々に明らかになってくる。そして8月の祭りの後、その事件は起こった。
思いのすれ違い、良かれと思う気遣いの過ちなど色々と思わせられる場面がある。夏が終わり江口は都会に帰ってゆく。駅まで送って来た安子との会話、そして三郎が別れ際に江口に投げつける言葉が全てを表している。
(キャスト)
安子(妹)=小林聡美
江口(大学生)=山下規介
郁代(姉)=根岸季衣
直之(義兄)=峰岸徹
秀(愛人)=入江若葉
三郎(使用人)=尾美としのり
志乃(おばあさん)=入江たか子


